『老前整理』文庫本







目次

第1章 老いるほど捨てられない

第2章 モノの整理は、心の整理…わくわく片づけ講座

第3章 捨てれば、心も暮らしも軽くなる

第4章 よりよく生きるために、いまからできること

■2016年5月1日 新潮社 

■価格:本体460円+税

『老前整理』(2011年徳間書店)の文庫版です   2019年3月末で発売終了

   







2011年に単行本の『老前整理』(徳間書店)を出してからのことや近況報告、また

文庫版に対する思いをあとがきに書きました。

「文庫版あとがき」

 最後まで読んでくださりありがとうございました。二〇一一年に書いたあとがき

を読み返すと、これが最初で最後の本だと思っていたので、思いっきり肩に力が入

っていることがよくわかります。

 さてここからはその後の五年あまりの日々についてです。まず、ほら吹きおばさ

んのごとく発した「老前整理を全国に発信したい!」はどうなったかといえば、目

標の半ばあたりでしょうか。

 3年前から「くらしかる」の事務所の壁に日本地図を貼っています。老前整理のカレン

ダーにハナマルをつけるのと同じで、講演で訪れたった地に丸いニコニコシールを

貼っています。

これを見ると、あそこではこんな質問があったし、お世話になった○○さんのお顔

とか、往復の車窓から見る風景や名物の△△を食べたとか、いろいろな記憶がよみ

がえります。

 全国47都道府県で、現在シールが笑っているのは1道2府23県、あと21県

(※)です。

中には本書を読んでくださった方が、市役所へ本を持参して「この人を講演で呼ん

でください」の直談判で実現したこともありました。(市役所の方はびっくりされ

たようでが)

 また消費生活センターや社会福祉協議会、区役所の方がこの本をきっかけに講演

を企画してくださったことも少なくありません。民生委員の方たちの集まりでお話

ししたこともあります。つまりたくさんの方とつないでくれたのが本書です。 

 もう一つ全国の人とつないでくれたのが、NHK学園の通信教育講座です。

2013年から始まり、学園の事情で2016年4月末で講座の受付は終了しましたが、

この講座でも1000名を超える受講者があり、2回にわたるリポートで抱えておら

れる問題やお悩みについてアドバイスをさせていただきました。 

 男女比では男性4割女性6割、年齢は40代からで、予想に反して70代、80代も多

く、最高齢は94歳の男性でした。

 80代の方のリポートには「老前ではありませんが…」という断りが入っている

ことも多く、その場合、「老前整理」を実行しようと思われたのですから、何の問

題もなく、気になさることはありませんとお答えし、実行していただきました。

完璧を目指すのでなく、できることをできる範囲で実行していただくのが老前整理

です。

 またお悩みや解決したい問題も一人一人違い、すべてのリポートに目を通し、下

手な字でコメントを書きました。

ここで老前整理を実行した皆さんの感想を紹介しましょう。


■整理を始めて強く感じたことは、物を整理する前に心の整理をするということで

した。

これが解決すれば、物の整理は容易になり、すっきりした気持ちになれます。最近

は整理することに面白さを感じるようになり、他人にも老前整理の話をしていま

す。他人に話すことで、より決心が強くなります。(50代男性)

■老前整理をやってみて一番変わったのは自分の心の持ち方です。これまでは過去

のことに執着して、思い出のものなどを処分できませんでしたが、心を未来志向に

切り替えることでふんぎりがつき、思い切って整理できるようになりました。

(60代男性)

■部屋の中がすっきりして見違えるようになりました。新しい所に引っ越したみた

いです。これだったら友だちも親せきも案内できます。(70代男性)

■始めたころ、わたしには処分できないなぁ―と思っていたものを処分することが

できました。まだ自分で家事などできますが、老いは止められません。年をとると

いうことは人ごとのように思っていましたが、老前整理って本当に考えなければい

けないなと思うようになりました。これからもスッキリした部屋作りにがんばって

いきたいと思うようになりました。(60代 女性)

■部屋の状況はそれほど変わりませんが、気持ちというか意識はずいぶん変わりま

した。何年も着ないまま吊るしてあったスーツを今までは何も考えずに毎日眺めて

いました。それがある日突然、「この先、着ることがあるだろうか。いやもう着な

いだろう、よし処分しよう」このようにいろいろなものを、いるかいらないか、意

識してみるようになりました。(60代女性)

■物はシンプルに、心豊かに、過去よりこれからの人生を充実させていけるように

工夫したいと思います。これからは服装をもっと明るく、ヘアスタイルもすっきり

して、表面的にも内面的にも、豊かな生き方をしたいです。(70代女性)

■老前整理は自分を大切にすること、慈しむことだと気が付いた。(70代女性)

■すればするほど気づく対象は多く、これが生きているということかもしれない。

(70代女性)

■老前整理は一度にできない。ずっと続けたいと思い、完成したということでな

く、これからの人生にとって途中経過だと思われる。(80代女性)

■老前整理はモノの整理が最終目標ではありません。片付けた後、どう生きるかの

未来志向ですから皆さんの未来予想図を紹介します

■退職後は新車を購入して妻と旅行を楽しみたい。老前整理を進め身軽になって家

族の負担にならないようにしたい。友人を大切にし、100歳を目標に楽しい人生を

送りたい。そして感謝の心を持ち続けたい。(50代男性)

■健康第一に朝の散歩、ラジオ体操や木刀の素振り、体力作りにがんばりたい。今

後は国内の世界遺産観光地巡りを楽しみたい。(60代男性)

■「くらしかる」な生活を第一に実行。毎朝の遊々散歩。夫婦でのんびり温泉旅

行。(60代男性)

■家を新築またはリフォームして暖かな家で過ごしたい。お金を貯めて世界旅行を

したい。いつまでも健康でまわりに迷惑をかけないで生きたい。(60代男性)

■趣味(囲碁)を仲間と楽しみながら打って行きたい。(80代男性)

■一〇〇歳で東京オリンピックを見るためにいらないものを整理して元気で暮らし

たい。(90代男性)

■今まで家事を第一に生活してきたが、これからは家族のことは気にせず、自分の

趣味などゆとりをもってのんびり生活したい。(60代女性)

■たくさんの付き合いがあったが、本当に大切な人に絞り込んで付き合っていくよ

うにしたい。このつきあいも整理に入ると思います。(70代女性)

■趣味の朗読などをもっとやりたい。(70代女性)

■老前整理が一応終了したら、英語とスペイン語の勉強を再開して、できれば海外

へホームステイに行きたい。(70代女性)

■植木は最小の数にしておくことで夏でも冬でも気にせず旅行をする。博物館やコ

ンサートなどで本物に会い、一度きりの人生、感動を少しでも多く持ちたい。物を

置かない代わりに感動を文章に残して気持ちの整理をしたい。(70代女性)

■自宅を開放して、いつでもだれでも集まれるサロンをつくりたい。

(70代女性)

■これからは若い方々を支援していきたい。小さなことしかできないが、できるこ

とをする。子どもに遺品整理で迷惑をかけない。最期は静かに旅立てますように。

(80代女性)

■家族との会話、人との出会いと継続を大切にする。(80代女性)

 いかがですか。こうして老前整理をたくさんの方が実行されました。

 通信講座の利点は、直接顔を合わせないので、質問や相談がしやすいこと。自分

のペースで進められる。じっくり考える時間があることなどでしょうか。

 一方難しい点は文章を書かなければならないこと。書き慣れていないとリポート

を書くことがおっくうになるかもしれません。また傍に催促する人がいないので、

自分で実行するという意志の力が必要になります。

 講演会などより男性の割合が多いのも、仕事で計画を立てて実行することに慣れ

ておられる。経過・結果の書類作成が苦にならなかったのかもしれません。

 このようなリポートのやり取りに加え情報発信として、数冊の著書の出版に加

え、新聞のコラムや2014年の4月から3カ月間、NHKラジオ第二放送「こころを

よむ」という番組で週1回「心と暮らしを軽くする『老前整理』入門」を担当しま

した。

 この番組のおかげでラジオを聞いたと講演の依頼があったり、長野のお寺の畳敷

きの本堂で檀家の方100人くらいに講和ならぬ老前整理の話しをさせていただいた

こともあります。

 また講演に行って「新聞のコラムを読んでますよ」と声をかけていただいたこと

も少なくありません。

 他には雑誌や新聞の取材も受け、振り返ってみると、本当に全国でたくさんの方

にお世話になりました。この場を借りてお礼を申し上げます。

 ここまではうまくいった話ばかりで、さぞかしとんとん拍子だと思われるでしょ

う。しかし実際は失敗も多く、がっかりして落ち込むこともありました。

 そのひとつ、2011年の年明けから3ケ月にわたり、夜の報道番組の特集企画で

取材を受けていました。セミナーの様子や数名の方に協力していただきご自宅の取

材など撮影が進み、ようやくあと数日で放送という時に東日本大震災が起こりまし

た。

 津波の映像や家を失って避難したり、原発で混乱した状況の中で「モノを捨て

る」企画なんてとんでもない。ということで放送されることはありませんでした。

 誰が悪いのでもないし、被災者のことを思えば不満も言えません。巡りあわせだ

とわかっていましたが、協力してくださった方々も放送を楽しみにしてくださって

いたので申し訳なく、落ち込むとともに「調子に乗って浮かれてはいけない」とい

う天の戒めの声にも思えました。

 被害の状況がわかるにつれ、阪神大震災の記憶がよみがえり、無力感にさいなま

れました。こうして半月程はまともに仕事が手につかず、ある仕事では準備不足で

先方にご迷惑をおかけし、自分のふがいなさに情けない思いもしました。

 失敗は数々ありますが、わかりやすいのは落語のDVDです。正直なところ売れ

ませんでした。税理士さんにも叱られました。

 つまり山あり谷ありの日々で、ここでは書ききれません!

しかし、今思えば初めての経験をたくさんさせていただき、たくさんの人に出会

え、充実した時間だったと思います。

 最後に、私の仕事は「どうすれば老前整理を実行してもらえるかを考えること」

だと思っています。

 そのための企画を考えること。落語のDVDもそのひとつでした。本書にも書い

た通り、無理なく続ける方法として考えたのがカレンダーにチェックです。どうす

ればモチベーションを上げられるか、の答えが自分へのごほうびです。まだまだ考

える余地があると思っています。

 頭の中はいろいろなアイデア(妄想?)でいっぱいなのですが、なかなか実現ま

でこぎつけられません。世の中の動きをみますと、ゴミ屋敷以外に空き家や押し買

い等の問題も各地で起こっています。このようなことも視野に入れながら少しずつ

バージョンアップしたいと考えています。

そして「老前整理とは?」と問われたら、「自分を大切にし、慈しむこと」と答え

ます。

これは通信講座の受講者に教えていただきました。

 このような経験、ご教示をこれからの仕事に活かしていければと思っています。

文庫化にあたり、新潮社文庫編集部の中川建氏に大変お世話になりました。また単

行本の文庫化をお許しいただいた版元の徳間書店にもお礼を申し上げます。

 2016年 桜の開花予報を聞きながら                                 

※この時点で、講演にうかがったことのない都道府県は21県でしたが、現在はあ

と18県です。まだ伺ったことのない県の方、よろしくお願いします。







         




     





















   

   

       
                                         


                                                          





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