『老前整理のセオリー』


目次
第1章 老後のリアリティ −実家を片付けるー
第2章 老前整理のセオリー ―身の回りを整理するー
第3章 未来へのマイルストーン −定年後の計画を立てるー

■2015年2月10日 NHK出版 
■価格:本体740円+税

自分の老前整理は眼中にない男性に、つまり『定年男の老前整理』よりも前に読んでいただきたい本です。
  
     

    

    
  

この本で何を言いたいのか、「はじめに」に集約されています。


■はじめに


 これから「老前整理」についてお話します。

 本のタイトルをみて「何の本だろう?」「片づけ術の本だろうな」と思われた人もなかにはいるかもしれません。この言葉は私の造語です。

 二〇一一年に『老前整理――捨てれば心も暮らしも軽くなる』という本を初めて出版してから四年が経ちますが、ようやく「老前整理」という言葉が知られるようになりました。

 生活情報番組などのテレビやラジオの出演、新聞や雑誌の取材などもたくさんいただくようになりました。ここ数年は全国各地に講演へうかがう忙しい日々を過ごしております。おかげさまで「老前整理」について書いた本もシリーズで累計十八万部を超えるなど、多くの人に実践していただくようになりました。本書を書くきっかけも、私が二〇一四年にNHKのラジオ番組に出演して三か月間の講座を担当したことがご縁です。

 「年金だけで老後を暮らせるのだろうか」とまずお金の心配をする人。「老人ホームに入るべきだろうか」と考える人。または「自分が死んだ後の遺産の相続は大丈夫だろうか」と不安に思う人もたくさんいらっしゃるかもしれません。こうした“老後の問題”にヒントをくれる本はたくさん出ています。

 あるいは「お墓を買っておかなければ心配だ」「葬式はどうしようか」と老後のみならず、自分の“死後の問題”までを考える人もたくさんいらっしゃることでしょう。エンディングノートを書くなど自分の死後をプロデュースする「終活」も流行っていますね。たしかに、「死後も美しくありたい」という気持ちはよくわかります。

 でも、準備はそれだけでいいのでしょうか。

 本当に解決しなければいけない問題は「老いる前」に「モノを整理する」、そのプロセスのなかにあります。

 老前整理は単なる「片づけ」や「整理」の話ではありません。

 モノを整理することを通じて、自分を見つめなおし、家族や友人とのこれからの人間関係を考え、未来にどのようなライフスタイルを描くのか。それらを考えることが老前整理です。

 「片づけは妻に任せているから大丈夫」という男性のみなさん。その考えは本当に危険です。

 私の講演に参加していただいた、ある男性のお話をしましょう。

 Aさんは50代後半の会社員です。

 94歳でひとり暮らしをする実家の父の家を久しぶりに訪ねました。母はとうのむかしに亡くなっています。「もったいない」が口ぐせの父は、家のなかに整理がつかないほどモノを溜めこんでいました。

 父は少し記憶力が落ちてきているのか、何がどこにあるかを把握できなくなってきている様子。足の踏み場もない部屋のなかで、足元にあるモノにつまずいて骨折されてしまってはたまりません。

 老体にとって骨折は大事故です。冬場ともなると、電気ストーブから散らかるモノに引火して家事になりやしないかと心配でなりません。もちろん、Aさんは平日毎日働いているので、ただ心配だからといって会社を休むわけにもいきません。

 Aさんは「片づけようか」と父に言おうかと思いましたが、躊躇しました。

 なぜでしょうか?

 「父くらいの年齡になると、モノを処分することは、自分が死に近づいている実感につながってしまいます」とAさんは言います。「もったいない」が口ぐせの父親だっただけに、なおさらのようです。

 これは立場をかえて考えるとよくわかります。たとえば出世コースからはずれたと思っている会社員に「ここを片づけて身辺整理しなさい」と言えば、リストラの合図なのかもしれないと勘違いするかもしれませんよね。同じように、高齢の親には、気軽に「片づけようか」とは言えないのです。

 かといって94歳ともなると、自分でモノを捨てて整理する気力も体力も当然ながらありません。

 このような状況になってしまっては、ころんでけがをしないようにしてあげたい、もっと快適に暮らせるようにしてあげたい、と思っても、なかなか打つ手がないのです。

 「だから老前整理のセミナーに来ました」とAさんは言いました。自分はそうなりたくない、子どもに迷惑をかけるわけにはいかない、と心から思ったそうです。

 だからといって、自分は大丈夫だろう、とお思いですか?

 こんなデータがあります。2035年には、世帯主が65歳以上の高齢世帯のうち、ひとり暮らしが4割近くになるそうです。その比率は東京都がもっとも高く、実に高齢世帯の44%がひとり暮らしになるだろうと推計されています(国立社会保障・人口問題研究所『平成25年版高齢社会白書』)。

 2人に1人は65歳を超えるとひとり暮らしになるかもしれない、というと言い過ぎでしょうか。少なくても他人ごとではありませんよね。

 もっと言えば、老前整理はあなただけの問題ではありません。高齢の親、夫や妻、子どもや孫など、10年後、20年後の家族がどのように快適に暮らすことができるか、そのすべてにかかわるお話です。

 「わかったけど、何をどうしたらいいの?」と思われた方、もちろんご安心ください。

 本書では、私が老前整理の活動を続けてきたなかで、特に重要だと思ったノウハウやエッセンスをあますことなくお伝えいたします。

 まず第1章では実家で起こっている問題の対処法です。ものにあふれた実家があらわしているものは親のSOSでもあると思ってください。こうして実家の問題を考えることは、未来に起こりうる自分の問題を考えることにつながります。

2章では具体的な老前整理のセオリーで、順を追ってものの整理を進めながら心の整理をしていきます。3章は未来に向けてのプランニングで、これからどのような暮らしがしたいか年表を埋めながら明確にしていきます。どうでしょう、イメージが湧きましたか。

 また、私はワークショップや講演活動のなかでいろいろな悩みをもたれる方と出会い、老後における成功も失敗もたくさん見てきました。ですので、豊富なケーススタディを交えて老前整理のセオリーをお伝えしたいと考えております。いろいろな事例を見るなかで、自分だったらどうするか、ぜひ想像力をはたらかせて考えていただければと思います。

 それでは、老前整理の話をはじめましょう。